私の最近の仕事を簡単に説明するのは難しいですが、少し書きたいと思います。
商品の開発をお願いされるケースが多いのですが、商品単体をデザインしても、なかなか売れる商品にはなりません。
いいものを作れば売れると思われている経営者も未だ多く、そういう時代も確かにあったようです。
しかし、今は、いかにお客さんにファンになってもらうか、それがとても重要になっています。
中身が良いものであるのは前提ですが、商品名、ロゴ、パッケージ、リーフレット、カタログ、ホームページ、お店、ショップカード、ユニフォーム、店員さんまで、商品に関わる全てに会社の考えを表現する必要があります。
つまり、金太郎飴のごとく、どこを切っても、同じ考え方で一貫していることが重要だと考えます。
また、その商品の背景、地域、歴史、素材から始まる、商品の作られ方であるとか、作っている人、売っている人、につながる、ストーリーがとても重要で、それをお客さんに伝える必要があります。
せっかく、良いものを作っているのに、良いものに見えないような売り方をしているケースも多々あります。
クライアント様とヒアリングをしていて、そんな良いストーリーがあるのだと感心することも多いです。
私の仕事は、最後はデザインという形にしますが、そこに至るまでの、リサーチであったり、思索であったり、計画するところがとても重要であり、判断に至るまでのプロセスにかける時間がとても長く、非常に難しい部分です。
これは、チラシ一枚を、依頼されクライアントの要求をパズルのごとく当てはめていくような作業とは全く異なります。
そもそも、この商品をPRするのに、チラシが必要なのか?
この商品の良さってなんだろう?
この会社は今までどんな商品を開発し、今後、どんな商品を作って、社会の中で、どういう存在になりたいのか?
そこまで考えないと、チラシ一枚のデザインはできないですし、ひょっとしたら、チラシ以外の方法が正しいのかもしれません。
ですから、商品のデザインを頼まれても「はいわかりました」とはいかないものであり、しばしば、クライアントの最初の想いとは異なる方向にいく場合が多いです。
「デザイン」とは中身の外側にまとう、デコレーションのようなもの。と多くの方に思われています。
ですから、いろんなことが社内で決まったあとに、外注先として、最後に持ってこられる場合が多いです。
そういう意味では私の仕事は上記の狭義でのデザインではなく、どちらかというとマネージメントに近いものだと思います。
しかし、最終的にできるデザインや形というものはとても強力なツールであり、強力な表現力です。
いくら、企画(ジャンプ)が良くても最後のデザイン(着地)がダメならこけてしまいます。
経営者と対等に、二人三脚で進まなければ成功しないものです。
経営的な部分と、デザインというのは切っても切り離せないわけですが、日本において、経営とデザインの学問は遠く離れています。
欧州の大学では、デザインマネジメント(経営)を学ぶところが数多くあります。
中小企業がほとんどのイタリアなど、デザインを経営の柱にし世界とビジネスをしています。
日本では経営者はデザインのことはわからないし、デザイナーは経営のことはわからないのです。
だから、デザインを外注にして、成功するか失敗するかは博打みたいな部分もあります。
私はいろいろな企業様とお仕事をさせていただく中で、デザインマネージメントの果たす役割の大きさを痛感します。
作れば売れた時代から、商品を通じてメッセージを伝えていかなければいけない時代になりました。
そんなお手伝いをしているというのが私の今の仕事です。
2016年4月1日 南 政宏